私が感情移入できる人物はやはりいないものの、短編として切り取ったシーンにそれなりの意味を見出せましたし、伝えたいことが言葉の意味からではなく、伝わってくることに作品の質を感じました。
中でも「残塁」と「桃の宵橋」は好きです。特に「桃の宵橋」の娘、母、父の関係ととある仕事の関係が、非常に面白かったです。
ただ、「桃の宵橋」を除く短編の主人公(男、さえない、泣き言多い、都合よ過ぎる、流されやすい)がちょっと。また、そこに作者の影や、佇まいみたいなものまで感じ取らせるので(表題作「乳房」は有名な奥様の事を連想させずにはいられないでしょうし、ある意味チープな同情を呼ぶ話しに、また自分に都合良い話しなってしまっていて何だか悲しい)そこらへんをどう考えるかで評価が分かれるのでしょうけれど、私個人の感想は、伊集院さんの個人的な歴史を無いものとして考えても、どうしても自分を割合棚に上げての哀愁を感じさせる、つまり少し自分に酔ってしまった感じがしてしまうところが少し気になりました。もう少し上手く隠すことで伝わる何かがあったのではないか?と。また、主人公を女にして「桃の宵橋」が書けるなら、もっとできたのでは?と思わずにはいられなかったので。
それでも、読んで良かった短編集です。大きな出来事の後に残る、言葉に出来ない何かを思い出して見たい方、少し弱ってる男性にオススメ致します。