著者渡辺容子氏が15年前に『患者よガンと闘うな』でベストセラーをなした近藤誠医師を知ったのはその1年前だ。さる新聞に掲載された『乳房温存療法』の記事を読み、彼女は自分の胸に5ミリのしこりを発見したことから始まる。ただちに近藤医師を訪れ超早期発見と近藤医師に驚かれたが、それから6年彼女はしこりを放置した。
ガンもどきを治すことはできても、ガンはどんなに早く切除し、抗がん剤でたたいても完治には至らず、死を免れることはできない。早期発見早期治療の名のもとに、ガンもどきの患者は大切な臓器をとられ不自由をかこち、ガン患者は長い闘病生活の間に、経済的、身体的、精神的に過酷な状況下壮絶な死を強いられる。という事を近藤医師は豊富なデータを用いて医療信仰にわが身わが家族をゆだねている人々に警鐘を鳴らした。
彼女の凄いところは、近藤理論の科学としての正しさを自らの身に実践していることに尽きる。地球が丸いならばインドにたどり着くと信じたコロンブスの実験を思い起こす。人間はいつか死ぬ。人生の有限を知ることが、自分の人生を豊かで有意義なものにするのだということを彼女は本書をもって示してくれている。彼女にとっての6年間は自分のガンがガンもどきか正真正銘のガンかを見定める期間であったろう。結果は正真正銘のガンであった。彼女の乳がんは大きくなり、リンパ節にも転移していた。
彼女の治療方針の全編を貫いているのは、最小限の手術と抗がん剤の利用、痛みを緩和するための放射線治療をその時その時、必要に応じて医師と相談しながら主体的に治療を選びとってQOLを大切にすることだ。自称、野生児と言う彼女は、仕事をし山に登り、大学院に学び、社会を俯瞰して自らの意見を発表したりとさまざまな活動を展開し、日常生活を謳歌している。医学の知識と科学的な態度、自分と心と身体の声を聞いて生きる。自律的に生きるという意味はこういうことなのだと同世代をいきる女性として、感嘆せずにはいられない。
一乳がん患者として、わが身を振り返った時、さまざまな後悔が甦る。自分の拙い知識でどのようにして自分に必要な医療を選びとることができようか?自分の愚かさ意気地のなさに呆然とするが、本書の中で著者は従姉妹の子宮頸ガンの受診の様子を紹介している。新たにガンで病院に受診しようとしている人、セカンドオピニオンをとろうとしている人には勇気を与えられるのではないだろうか。、おおいに参考にすると良いだろう。
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