瀬戸内海を舞台に始まる物語は、船幽霊の出現で幕を上げます。 幽霊は稀代の至宝を運んできた外国船を沈め、その宝を探して海賊たちは海をあらし、日本一の美女と名高い遊女は、宝を見つけた者と結婚するとのおふれを出します。 彼女を争いあう大名、その大名を手玉にとる詐欺師、幻術師など、鮮やかに立ち回る人物が次々と登場しては、大波のように読み手を引き込んでゆきます。 瀬戸内海の景勝に、祭り行列、稀宝・財宝など、映像的にもおいしい画面が続きますが、とうとうと読み手を酔わせる口調の谷崎節に、転換・回想のテクニックなど、「小説」の充実感を存分に味わわせてくれます。 宝船の初夢のような、豪華絢爛な物語の世界に遊びたい方に、ぜひ、おすすめです。