文章はとても読みやすい。物語の導入部、主人公が突然の息子の失踪に動揺するあたりや、息子の行方を探ろうと行動しはじめるところでは、物語に引き込まれるようだったが、元夫の後妻である亜沙実についての描写が少し鼻についた。それでも、しだいに面白くなってきそうな気配はあった。しかし、亜沙実の過去について語られるようになってからは、その過去についての描写があまりにも生臭く、臭気が漂ってきそうなほどで、最後には辟易した。それでも、最後にはどうなるのか気になるので、何とか読んだが、物語の結末にはがっかりした。
後味の悪い結末が悪くても面白い作品はあるが、この本の場合は納得できなかった。特に、殺人を犯した人物が明らかにされたときには、あまりにも安直すぎるような気がして腹が立った。亜沙実という、魔物めいた悪女が物語の中心的なテーマになっているのかもしれないので、謎ときの要素を追求する読み方は、間違っているのかもしれない。主人公の息子の行動や、人物造形にも、納得できなかった。
自分が好きになれないからと言って、面白くないものとも決めつけることはできないが、他人にお勧めする気にはなれない。