作者には「第八の地獄」、「鏡よ、鏡」等の著名な長編もあるが、やはり短編における切れ味が真骨頂であろう。本短編集は特に人生のブラックな面を強調する出来となっている。
「ブレッシントン計画」は近い将来、日本でもこういう日が来るんじゃないかと思わせる妙な現実感がある作品。「不当な疑惑」は、双子物。ミステリに双子を登場させると大抵失敗するものだが、本作は双子ならではの完全犯罪計画を描いて秀逸。昔見た映画(題名は失念)にこれと似た作品があったが、本作が原作なのかもしれない。「伜の質問」は死刑執行人の息子が父に発する素朴な質問に対する父の回答は ? 「九時から五時までの男」は昼と夜とで二つの顔を持つ男の生態を描いた有名な作品。マンガ家柳沢某のアノ作品は、本作の頂きだろう。
短編の名手が特に人生の暗黒面を強調して、人間模様の機微を描いた傑作短編集。