グリム童話の新解釈になぞらえて、事件の容疑者を特定し、しかる後に、
アリバイトリックの九類型に基づくアリバイ崩しが行われるという趣向が
採られた連作短編集。
■「ヘンゼルとグレーテルの秘密」
元ネタから犯人はバレバレですが、現場にアドレス帳が存在しなかった
という伏線はなかなか秀逸。また、犯人に死体を丸焦げにさせることで、
トリックを補強するだけでなく、童話ともリンクさせているのが素晴らしい。
■「赤ずきんの秘密」
ミステリと童話を結び付ける、被害者の顔にかけ
られていた赤ワイン、という不可解な痕跡が秀逸。
■「ブレーメンの音楽隊の秘密」
二つの物理トリックを組み合わせた放火殺人。その内の一つは
××に前例あり。
■「シンデレラの秘密」
メインとなるアイディアは、前例のあるものですが、
それをアレンジし、目撃者を設けたのが美点です。
“靴”と“灰”というシンデレラにまつわる小道具の扱いも巧妙。
特に、〈灰皿はせこかった〉という伏線が異彩を放っています。
■「白雪姫の秘密」
トリックはお粗末ですが、エグい真相は印象的。
■「長靴をはいた猫の秘密」
トリックは中々よくできていますし、それを可能ならしめる、
犯人の属性にまつわる伏線も、フェアに張られています。
■「いばら姫の秘密」
心理的なトリックですが、少々無理があるようなw
ただ、被害者のストーカーは、いい味だしています。
■「狼と七匹の子ヤギの秘密」
結構手の込んだトリック。作中の幼稚園児が純真すぎるような気もしますw
■「小人の靴屋の秘密」
連作を締め括るためのサプライズが仕込まれています。
これまでの八編で踏襲されてきた“お約束”が真相究明のための手がかり
となっている点や、本作のモチーフである××にまつわるあるモノを作中に
取り込んでいるのが秀逸です。