大学生の女の子が一人称で語る、九つのストーリー。
それぞれは、泉鏡花や太宰治や田山花袋やサリンジャーなど古典的な作家の作品をタイトルにしており、主人公がその小説を読み、感じたことが挿入されながら展開されていきます。ただ、それらの小説は、この本のストーリーにはあまり大きな影響を与えてはいません。
9つの独立した物語という感じではなく、この本1冊としてストーリーが展開されていきます。
何を書いてもネタばらしになるので、詳しくは書けないのですが、私は、読後、過去の事件や恋人との関係などで傷つき苦しむ妹にしっかりと寄り添い、しかも飄々とした感じでいる兄の愛情が心に残りました。
また、物語の序盤では健康的でいきいきとしていた主人公が、傷つき悩んでしまったあと、物語の終盤では、癒され新しい自分を獲得していくのにも心が動かされました。
特に若いときは、一直線に大人になっていくのではなく、こんなふうに傷ついたり再生したりしながら、新たな自分を得ていくのですね。
ところで、私はこの本を読んで、サリンジャーの不朽の名作「
フラニーとゾーイー (新潮文庫)」を想い出しました。この本は、この名作へのオマージュではないかとさえ思うのですが・・・・。
この本は、フラニーとゾーイーより格段に読みやすいのに、けっこうそれに迫るようなよさがあります。