歴史という「出来事」はひとつであっても、その読み解き方はひとつではない。前作『乙女の日本史』は、歴史の違う眺めを絶妙に抽出した1冊だった。その流れを踏襲した今回のテーマは、「文学」。
私が高校時代に学んだ文学史は、いわゆる「暗記科目」であった。夏目漱石といえば『こころ』、樋口一葉といえば『たけくらべ』、といった具合に。ただ単に、誰が何を書いて、それがどんな内容でどう分類されるのかを学んだだけだった。
本書はそこに乙女の目線で‘作者がどういう人間であったのか’や‘作者の生きた時代はどういうものであったのか’を描いている。文学はそこを理解してこそ、何倍も面白く読むことができる。
大学受験の勉強をしていた頃、どうにも源氏物語と相性が悪かった。出題されれば必ずと言っていいほど間違えていたので、源氏物語と聞くと今でもちょっと身構えてしまう。ただ、本書を読むと内容の解釈もさることながら、後世の人びとにどういう受け止められ方をしていたのか、それまでの見方では見えていなかったことを知ることができる。源氏物語に没頭(妄想?)し続けた日々を『更級日記』でさらけ出した菅原孝標女。鎌倉時代に早くも乙女目線の本音トークを完成させていた藤原俊成女。公家とともに文学が地方へ散らばった戦国時代に“おじさん”が大好きな精神論へと解釈を曲げられた『源氏物語』。
文学といえば高貴・高尚なイメージがあるが、こうして見ていけば、「なんだ、今とそれほど考えていることが変わらないじゃないか」と、小難しい考え方を抜きにして文学をより‘近く’に感じることができる。
昔ながらの凝り固まったものでは見えてこない文学の世界。本書のように、ひとつの文学にもいくつかの眺めから見なければ、本当の醍醐味は見えてこない。