お笑いの街のイメージが近年特に強くなった大阪ですが、甲斐みのりさんはもっとレトロで素敵な大阪を紹介していました。
少し艶消しをかけた写真がレトロ感を強調しています。大阪市中央公会堂、大阪府立中之島図書館など大阪を代表する文化財級の建物や、綿業会館のように設計者・渡辺節の代表作として残っているものも含めて大大阪時代の魅力が伝わってくるような紹介文でした。
喫茶店も丸福珈琲店北浜店、純喫茶アメリカン、平岡珈琲店などが掲載してあります。懐かしい雰囲気が漂う店内と濃い珈琲の取り合わせが古き良き昭和の香りを伝えているでしょう。
よくある大阪のガイドブックとは一味も二味も違う魅力が詰まっている本でした。
甲斐さんの豊かな感性が確かな審美眼を形作り、大阪のアイテムをカタログとして厳選して掲載してあります。書かれているエッセイの一つ一つが詩情に満ち、「乙女」の恋心が時折顔を覗かせますので、読んでいてふっと和む感じがこの本を特徴づけていると思いました。
目線や視点が変わるとこうも大阪が変貌するわけです。美しい写真と優しさが伝わってくるような文章で綴られていました。甲斐みのりさんは大阪人ではなく、大阪芸術大学に学んだ4年間の生活をベースに大阪というものの魅力を再発見しようとして努力されたのがよくわかる内容でした。このような嗜好を好む方には愛読書になるのではという予感がしました。
ステレオタイプ的な大阪を求めるのではなく、懐かしく優しさが伝わってくるような大阪の紹介ですので、それを理解した上で本書を手に取っていただければ幸いです。