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24 人中、22人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
昨年話題になった岩波文庫,
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レビュー対象商品: 久生十蘭短篇選 (岩波文庫) (文庫)
この文庫本は昨年出版されたが、久生十蘭が岩波文庫に入ったことはちょっとした出来事だったようで、私もそれがきっかけで本書に興味を持ち購入するに至った。この短篇集の大きな特徴は初出紙誌を定本としているところだろう。ちなみに、現在刊行中の『定本 久生十蘭全集』(国書刊行会)は著者生前最後に公表された本文を定本にしているそうだ。この作家には「執拗な改稿癖」があったようで、読み比べてみるのも一興かもしれない。本書編者の川崎賢子氏はそちらの全集の編者の一人でもある。氏はおそらく久生十蘭という作家を一番よく理解している研究者の一人であり、全集の刊行と同時進行でこの文庫版を編まれたはずである。したがって、ここにはこの作家の精髄が示されているといっても過言ではあるまい。 久生十蘭といえば推理作家だろうぐらいにしか思っていなかった私も、ここに収められている短篇群を通読して、何よりもまずそのテーマの多様性に驚いてしまった。むしろ推理作品の要素は少ないくらいだ。また、様々な文体が駆使されている点にも驚いた。「春雪」のような純愛物があるかと思えば、「無月物語」や「泡沫の記」のような歴史物、はたまた「鶴鍋」のような何回か読まないと分からない難解な作品も含まれている。また、女性の電話での一方的な会話体で書かれた「猪鹿蝶」などを読むと、男性の作家がここまで女性らしい会話体を駆使できるものかと驚いたりもした。ちなみに私の一番のオススメは「蝶の絵」である。その最後の一段落は絶品である。 最後に、この値段で15篇の作品(総頁数約400頁)が収められているというのは、相当良心的な価格設定であると言っておく。同じような好短篇集に、『怪奇探偵小説傑作選3 久生十蘭集 ハムレット』(ちくま文庫)があったが、惜しむらくは絶版となってしまった。こちらには14篇(総頁数約470頁)が収められており、値段も本書に近い。一方、講談社文芸文庫から出ている『湖畔・ハムレット 久生十蘭作品集』には7篇(総頁数約250頁)しか収められていないにもかかわらず値段はずっと高い。ちくま文庫版が絶版になったいま、本書は格好の十蘭入門書としても広く読まれることになるだろう。 ※作品名を一部訂正致しました。
17 人中、14人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
見直されるべき作家,
By 石屋川乱読 (御影) - レビューをすべて見る
レビュー対象商品: 久生十蘭短篇選 (岩波文庫) (文庫)
久生十蘭が岩波文庫に入った。十蘭も文学扱いされるに至ったかと思う次第ですが、この作家、なかなかただ者にあらず。ミステリー、捕り物帳、伝奇もの、人情話…と縦横に 書いた。ボーダーにこだわらずボーダーを超えた作家でした。そういう作家は得てして マイナーにみられることがあるのですが、十蘭もそうであったかもしれません。40年前に 江戸川乱歩や夢野久作の全集とほぼ同時に全集が刊行されましたが、前2者が早くから 文学として再評価されたのに対し、十蘭は遅かった。おそらくすでに文学者として通って いたからかもしれませんが、そうとしてもやはりマイナーか大衆文学系として扱われてきた ということでしょう。発作的に短編集が出てきたことがあります。 収録作品の「予言」などはブライアン・デ・パルマの映画を見たようであったし、「無月 物語」もストーリーの展開に時間も忘れ別世界に遊ばされました。まあ、読んでみてくだ さい。寝床で小説の構想が頭に浮かぶと妻を起こして口述筆記させ、それも音楽を入れ たり、自分で感涙にむせびながら情熱をこめて書き上げた作品を。そこには情熱だけでなく 周到な小説作法もうかがえます。
2 人中、2人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
ジュウラニアンって?,
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レビュー対象商品: 久生十蘭短篇選 (岩波文庫) (文庫)
「解説」からの受け売りだが、「選ばれた少数者として、久生十蘭の小説の美技に魅せられた読者」を"ジュウラニアン"(ジュラニアン)というそうだ。ということから考えれば、この短編集を読んだだけでは、なかなかジュウラニアンになれそうもない。読者に相当な予備知識なり、読解力を要求するのが十蘭小説の難しいところであり、逆に楽しいところでもある。「解説」を読んでから、再度挑戦する魅力にあふれた短編集である。 「猪鹿蝶」は、最近新訳がリリースされたジャン・コクトーの「声」のパロディーなのか。 「蝶の絵」と「雪間」は連作か?それにしても「雪間」の唐突な終わり方、これは何だ? 十蘭がこだわる伊沢姓とは? 「母子像」が第2回世界短篇コンクールで第一位を獲得した背景にある戦後占領期のCCD(民事検閲局)コードの終了の謎とは? 謎が謎を呼ぶ?興味にあふれた短篇集である。その初出の多くが大衆小説雑誌「オール読物」に掲載されたものである。それが岩波文庫に収録されたということもなかなか面白い。
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