八尾中学で三上さんから数学の授業を受けました。ある日数学の大好きな親友が、先生達の学力を試験するのだ、と言って当時の旧制高校の数学書から問題を引っ張り出したりして、職員室の数学の教師の所へ持っていきました。もちろん、その親友は自分で問題を解いていたのですが、先生達は全滅、三上さんだけがすぐ解を出されたので、私たちはびっくりしました。あと一人のベテランの先生は一日考えて、解かれました。三上さんは結婚もされず、インドネシアかどこか、南方の言葉の文法を研究されているらしい、と噂があり、ピアノがすごくうまい、不思議な先生でした。三上文法の存在を知ったのは本田勝一「日本語作文の技術」でした。「象は鼻が長い」もその時買いました。金谷氏のこの本が出たことを知った時、すぐに買って大変面白く読みました。この本は面白すぎる所が欠点かも知れません。「主役を抹殺した男」と書かれている方のレビューを読みましたが、私の場合は読んでいる本を愛しながら、読むことにしています。肌に合わないものは、数ページ読めば判りますし、そんな時はその本を閉じるだけです。もし批評するなら、著者への敬意を失わずに批評したい、と思います。敬意が持てない時は無視又は沈黙です。人との付き合い方と本との付き合い方はなんだか似ています。この本が百パーセント完成したもの、とは思えませんが、曾ての恩師、三上さんのことをここまで詳しく調べて書いてくださった著者に心からありがとう、とお礼を言いたい気持です。読み易いことが名文の条件のひとつなら、これは名文だと思います。