クルト・レーデル老がみずからの編曲によって手兵プロ・アルテ・オーケストラを指揮した本作は、J・S・バッハの神髄にしなやかに触れることができる出色の演奏です。いぶし銀のような渋みのなかに優婉な魅力をただよわせている。いささかも奇をてらわない編曲の深遠さは、飽きが来ないものです。
全15曲の収録作品には、「トッカータとフーガ」「目を覚ませと呼ぶ声が聞こえ」「主よ、人の望みの喜びよ」「アヴェ・マリア」といった有名な楽曲もしっかりと選曲されている。これからバッハに親しんでみようと考えている初心者の方にもお薦めできる内容だとおもいます。
たとえば、4曲目の「羊は安らかに草を食み」は、NHKのFM放送の〈朝のバロック〉のテーマ曲として使用されていたもの。宗教カンタータのアリアの声楽パートを二本のフルートに置き換えていて、すがすがしさが心にしみる好演です。きっと、これなら聞いたことがあるという方も少なくないのではないかしら。
名盤にして廉価盤。録音はクリアで耳にやさしい。もちろん、ただの心地好いBGMとして聞き流すことも自由。どういう聴きかたをしても楽しめてしまうところが、バッハの音楽のすばらしさです。