著者の南條氏は、中国で満漢全席を食べるという夢を実現したい一念で小説をものし、実際にその「酒仙」という小説で第5回日本ファンタジーノベル大賞優秀賞を得、実際に杭州へ行き「満漢全席」を食べてきたという経歴の持ち主。
それゆえ本書のタイトルを見た当初は、豪華絢爛なフルコース料理が主役と想像したのだけど、実際の主役は小腹のすいた時に街角の屋台にフラリと立ち寄ってちょこっとつまめるような軽食「小吃」。
ちょっと意外に思ったけれど、著者本人の体験談の合間に様々な邦文・中文文献からの引用がさらりと挟み込まれた本編を、ひとつ、またひとつと、つまむように読むうちに、この「小吃」も満漢全席に劣ることのない実に奥深く味わい深いモノだということが、じわじわと染みいってきた。
それにしてもこの人は、どうしてこんなにも美味しそうな、読むだけでお腹がグゥと鳴り出す文章が書けるのだろう。ひとつひとつの表現は、それこそありふれた言葉で組み立てられているのに。このあたりのセンス、どこか料理と通じている気がしてならない。