第二次世界大戦中に連合国とも枢軸国とも直接干戈を交えることなく振る舞った三カ国についてその戦時史を概観できる書です。私はスペインのフランコ独裁政権に関する記述部分を興味深く読みました。
スペインが中立的立場をとったのは、大戦に先立つ時期に国を二分する激しい内戦を経験し、その結果疲弊しきったフランコ新政権に(心情的にはフランコ側を支援してくれたドイツに返礼したいという思いをはあったものの)参戦するだけの余裕がなかったからです。特に食糧の欠乏は甚だしく、ドイツにその支援を求めたり、また英米側もスペインが枢軸国側につくことのないように食糧支援を一時期行なったりしていたという史実を読むと、政治的駆け引きの奥深さを感じました。
敵方と見られる国に対するアメリカのこのようなやり方での支援は、その後の国家間紛争でもたびたび行なわれるようになる、と著者は指摘しています。敵視していたイランにレーガン政権が武器販売を行なっていたと見られるイラン・コントラ事件なども確かにその延長線上にあるのかもしれません。
ただし気になったのは、著者がこの本を書くにあたってどういう取材経路をたどったかという点です。巻末に多くの参考文献が掲げられていますが、それはすべて日本語か英語で書かれた書籍ないし論文です。著者は日大の英文科出身ということですので英語の資料には自分であたることができるのでしょうが、それでも本書執筆の過程は他の人々が書いた資料を切り貼りしたということではないでしょうか。
中立国の政策というのはいってみれば戦時外交史ということです。外交文書など一次資料にあたることなく書かれた本書は読み物としてはそこそこ面白いのですが、記述のどの部分がどの論文からの引用なのかが明確でない書き方はあまり褒められたことではないと思います。