このアルバムにはベストと書かれているが、間違ってはいけないのは、
これを聴いて、なぎら健壱をコミックソングのミュージシャンと
決め付けてはいけないということです。
確かに「悲惨な戦い」に代表される落語風な語りと独特な節回しの上手さに、
思わず膝を叩いてしまうけれども。
しかし「街の風になって」や「この夜に」という硬派なフォークアルバムも
発表していることも忘れてはいけません。真面目にフォークを歌うのも、
コミックソングで笑いを取るのも、なぎら健壱のなかでは同じ根っこで捉えているのだと思います。
フォークという外国の音楽スタイルを借り物でなく、自分の生まれ住んだ土地(下町)を題材にとり、
表現しているアーティストだから、落語的な作風もあれば、下町人情話もあるのは自然なことなので、
下町土着フォークと呼んだ方がいいかもしれません。
このアルバムは、その落語的な部分を集めただけに過ぎないのです。
だからこの作風だけを見て、真面目にフォークしていない、不愉快と論じるのは、
少々見当違いと思われます。
だからこのアルバムは、純粋に歌の世界を笑うのが、健全で正しい聴き方です。
楽しみ方として「悲惨な戦い」は「葛飾区にバッタを見た」のバージョンより、
ユリ・ゲラーなどの世相?も入り、オチが多少過激になっています。
高田文夫のライナー、なぎら健壱自身のバイオグラフィも、フォーク盛衰史のようで笑えます。