この本は、とうようさんが全身全霊をかけて創刊したミュージックマガジンに発表された、とうようさん御自身の文章を中心に編集したまさにアンソロジー。
ツェッペリンなど黄金のロックと同時代に走りぬいた者にしか書けない貴重なロック評論の数々、とうようずトークの第1回原稿、ブラック・ミュージック、さらにはワールドワイドな音楽の紹介、かと思うと、キャンディーズの解散についての考察、度肝を抜くような点数をつけたクロス・レビューからいくつか、コケおろしていたパブリック・エネミーとの対決インタビュー、そしてもう2度と読めないアルバム100選を数本、最後は「レコードが恋人だった」という未発表原稿。なんてふところが広いんだろうと思う。そして本当にいつも「同時代」だったんだとあらためて思う。
とうようさんという巨大な存在は、この本1冊だけではとても終わらないが、とりあえず、残された私たちがこれからも音楽ときちんとに向かい合っていくためには、このアンソロジーから始めるのがいいのかもしれない。
いつもとうようさんが正しかったとは思わない。特に後期はなんだか頑迷なところもあったような気がする。でも、とうようさんがいたからこれまでずっと音楽を面白く聴けていたのも絶対確かなのだ。
おりしも、ジャズもロックもブラック・ミュージックもなんだか尻すぼみのような現状。こんな時にこそ、酷評を浴びながらも、自身の意見を堂々と発表し続けたとうようさんのこれら言葉のひとつひとつがあらためて大事に思えてくる。マストの1冊。