登録情報
|
だが、それだけか?
本書は全集であるから、彼のそれ以外の面も知ることができる。例えば「光と風と夢」。主人公の英国人作家R.L.スティヴンスンは序盤から怒っている。当時の英・米・独が彼の定住するサモアの人々にあまりに「横暴」だからである。彼にとってサモアの人々は年月を重ねる中で、「我が褐色の友」となっていく。同じく呼吸器に重い病を抱える中嶋敦の主人公への強い思い入れを察するにつけ、ほとんど熱いとも言うべき温かさが伝わってくる。
また、死を間近にした主人公が丘の上で感じたものは、視覚から入って全感覚に至る。その、息を呑むような鮮やかな体験を主人公と共有できるのは、目下全集だけである。
他、植民政策下の朝鮮で屈折した心を抱える親友と、細やかすぎるほどに彼のプライドを気遣う少年の「私」を描く「虎狩」や、一高時代の習作「巡査の居る風景」などからも博学故の卓見、即ち矜持という概念を人間の尊厳へと押し広げた作者の深い認識がうかがえる。
更に歌稿の「河馬の歌」のようにユーモアと優しさに和むものもあり、全集ならではの愉しみは多い。
また、「山月記」を知っているひとならば、もともとはこれを含めて四編の短編小説でセットになっている「古譚」の中の他三作品を読んでみるとさらに面白い!
短い文章の中に込められた強烈なモチーフ性が、芥川っぽくて好きです。
それなのに、なぜ、第十五回芥川賞とれなかったのか・・・。納得できませんねぇ。
|
この商品のクチコミ一覧
クチコミを検索
|
関連するクチコミ一覧
|
|
|
|