中山悌一の歌は、リアルタイムでは聴いたことがなく、初めて録音で聞いたのは、「18人の名歌手が歌うシューベルトの魔王」という欧米のさまざまな歌手(女声含めて)のアンソロCDでした。そのなかで、日本語で歌われている中山氏の「魔王」を聞き、震撼しました。声もドイツ人歌手に遜色のない深いものですが、日本語が立っていて、初めてリートというものの真髄にふれた気がしました。
そしてこのCDセットに。三大歌曲集もゆったりしたテンポで、ある意味、オーソドックスに歌われています(こちらはドイツ語)が、やはり独特の情感があり、最近のドラマティックだったり、ささやくように歌い流したりするようなあちらの有名歌手のもの(ローマン・トレーケルとか、ヨナス・カウフマンとか)より、飽きない味わいを感じました。
しかし何よりもやはりすばらしいのは「荒城の月」や「二人の敵弾兵」などの日本語歌唱。言葉と音楽が一体になって、胸の奥に入ってきます。「マンドリンのセレナーデ」も全く違ったジョヴァンニ像をきかせてくれました。
(日本歌曲は習っていてもいまひとつぴんと来なかったのですが、それは、今まで聞いたCDが、日本語をローマ字として楽器のように歌っているからだったのだと思いました。)
高雅で誇り高い日本語に、楽器ではない「歌曲」の力を感じたい人はぜひ。