昨今のわが国で知らぬ人がいないほどビッグ・ネームになった感のある中坊氏。森永ヒ素ミルク事件や豊田商事事件の記述もあるが、それよりも、氏がまだ駆けだし、無名だったころの市井の事件への取り組みの方がむしろ、興味深い。やり手弁護士と聞くと、法律をこと細かに駆使して、相手を論破するイメージを抱きがちだが、若き日の、そして今も、中坊弁護士の強さの秘密は「相手方よりも、裁判官よりも、現場を知り抜く」ことにあるという。「事件をひも解く本質は法律にあるのではなく、現場にある」。この一言がことのほか、心に残った。