日中関係に健筆をふるう著者の処女作。近年の中国の横暴・過去の捏造を論破する際の、著者の快刀乱麻ぶりに溜飲を下げた人も少なくないと思うが、そのルーツが意外にも中国古典にあったのか、という感じだ。
中国史の暗部を暴く、というより、その身勝手な思考回路を徹底解剖していくとその原型がすでに古典に現れている、というふうに、他の著作の副読本的な読み方もできるし、『孫子』『韓非子』『戦国策』といった、日本では過剰に高尚なものとして評価されている古典を「陰謀」というキーワードで再編集した歴史読物としても楽しめる。
個人的には、じつに古典的な「美女を利用する策謀」を読んだとき、ちょうど「某大物政治家が中国当局に女性関係で弱みを握られている」という週刊誌記事があって(もちろん真偽のほどはわからないが)その記事も本書も面白く読めた。日中関係という実に生々しい題材に切り込む著者が古典を語ることで、ともすれば無味乾燥な知識になりがちな「兵法」や「計略」が血肉を得ているように思う。
中国古典のダークな一面に圧倒され、兵法の見方が一変してしまうので評価は分かれると思うが、色々な読み方ができるので星5つ。「戦国武将に学ぶ」式のビジネス読本に飽きた人にもオススメ。