空気にも水にも国境はない。中国で発生した汚染物質は、風や海流に乗って日本の環境にも影響を与える。その意味で、私たち日本人は、中国からの輸入食品ばかりでなく、中国の環境問題にも関心を寄せるべきだろう。しかし、情報の隠蔽、操作などもあり、中国国内の汚染状況は必ずしも十分に伝えられていない。その中で本書は、河川の大規模汚染で隠しようもなかった化学工場の事故や、国内で問題になりつつある、水質汚染が原因と見られる「がん村」などの典型的な事例ばかりでなく、公表されている範囲での統計なども通じ、冷静・客観的に、実はここ数年の事でなく長期的に進行してきた中国の環境汚染の全体像を伝えようとしている。
地方行政が汚染物質を排出する企業に払わせる「汚染排出費」が安すぎ、垂れ流した方が得になったり、汚染排出費が財源になるため「汚染がなくなってしまっては困る」状況(さらにはそもそも地方行政が共産党による支配の道具となっており、民意を反映していないことが問題なのだが)など、中国の環境行政の問題点も、留学経験を生かしてか丹念に指摘しており、有益だ。
党や国家、行政には環境問題への真摯な取り組みは期待できない現状だが、その一方で、著者も関わっているNPO同士の国を超えた交流や経験の共有が進んでいることも紹介されており、未来への希望をつないでくれている。