本書は古代、中世、近世前期、近世後期、近現代と、5人の著者が分担しています。代表者の朴漢済(中世担当)が序文と日本語版への序文で出版意図を記載しています。曰く、
・韓国では時空的に歴史を理解する著作分野は
韓国歴史地図(2006年)、「アトラス世界史」などが出版されたばかりで、また緒についたばかりである。
・韓国に十分な中国史の解説書が1つもない
・中国史における日本語書籍の本で韓国語に翻訳されたものは多かったが、その反対は多いとは言えない。本書の出版が、韓国の中国研究学界の一部が日本の学界や読者に広く紹介される機会となったことを喜ばしく思う。
・一度だけで満足のいく結果が得られるとは限らないが、独創性ある表現・記述を工夫し、初めての試みとしては成果が得られたと自負している
訳者が表現を和らげたのか、原文が本当にこのような記載なのか日本読者へのリップサービスなのか不明ですが、韓国の中国史研究状況が、日本に比べるとまだまだ発展途上と認識しており、歴史アトラスというより図説的になったのも、優れた表現を追及した試行錯誤の結果であり、中途半端な面は否めないが、それも一里塚だと自覚している、との印象を受けました。
私は、じっくり内容を見るまでは、出版時期からして、中国の東北工程に反発した、政治的意図を込めた著作だと勝手に推測していたのですが、争点を強調するような記載は見られず、中国東北部も普通に記載されている印象を持ち、序文の通りの位置づけの著作に思えました。図説となると、日本では創元社翻訳・出版の「中国文明史」全10巻があり、豊富な中国史書籍が出版されているので、本書に不足感を感じるかも知れませんが、その割には日本で地域史の歴史アトラスは少なく(しかも翻訳版ばかり。ロシア、英国、中近世欧州、ローマ帝国、イスラムなど)、本場中国より研究が進んでいると言われてる割には中国史の歴史アトラスも出てません。この点で、本書には、不足を感じる箇所もある一方、明代物流など日本の専門書でわかりにくかった部分が頭に入り易い図も多く、類書が豊富であれば☆3なところですが、そもそもこういう書籍は日本で独自に出てないとおかしいような気もするので、☆4としました。