自分は中国の怪異譚であれば殆どの本に目を通していたつもりでいる位の怪異譚大好きという活字中毒者ですが、この本の内容は他書では見かけた事の無いエピソードが多く、しかも著者は殆ど霊異を信じていないようなのに妙に几帳面な記載だったり 狐の怪異については肯定的だったりと、中々不思議な立ち位置から書かれています。酉陽雑俎や聊斎志異などと随分印象が違います。著者は1724年生まれで1805年没ですからその違いも有るのでしょう。内容の一部ですが、肉親の鑑定法で「お互いの血液を混ぜ、溶け合えば親子 固まれば親子ではない」という支那の古い鑑定法が有りますが、その検査を行うに当たり「極度に冷やしたり 酢で洗った容器で検査を行うと検査結果がおかしくなる」という一説があります。冷やせば溶血しますし、今でも採血管の中にはクエン酸が混ぜてあります。18世紀中頃には既にこれらの知識を支那では持っていたわけです。突き詰めて「何故だ?」という思考法を持っていれば19世紀にあんな事にならず現在のアジア情勢も変わった姿になっていたと思います。タイトルに記した通り 他書で見かけない話が多く それも個人の経験であり伝聞にしても なるべく出所が明確になるよう気を付けて記載してあります。他にも西域の罪人の話とか興味深く読み耽った次第です。
上下巻で三千円とやや高価なのが難点ですが 古い時代の支那古典怪異譚が好きな方でしたら まず購入して損はありません。