本書は、豊かさが必ずしも民主化を誘導するとは限らない事を示している。
まず、天安門事件で多くの市民を殺した中国共産党は、市民を代表する党では無くなり存在意義を失った。そこでトウ小平は、経済成長を共産党の新たな存在意義とするべく南巡講和を敢行し、現在の経済成長のきっかけを作った。しかし中国の膨大な雇用を維持するには、年率成長率最低8%を維持する必要がある。しかし経済成長は永遠には続けられない。実際2009年に入り、経済成長にも息切れが見られる。経済成長が止まれば、失業者が増大し、存在意義を失った共産党は倒されると言われている。
一方中国の経済成長の過程で、富の格差、エリート層の腐敗が深刻な問題となっている。一般市民の不満は大きく、原因を作ったトウ小平の経済成長路線への不満が強い。これは昔を懐かしむ毛沢東主義の復活の声を大きくしている。失業者の暴徒が、毛沢東主義の中国を再び作る可能性を、著者は指摘している。
又江沢民が煽った愛国主義で、今の中国はナショナリズムに燃えている。毛沢東主義の自力更生路線と高まるナショナリズムが結びつくと、唯我独尊的強国主義に走る可能性を本書は指摘している。その結果中国が、台湾や尖閣諸島へ、露骨な野心を示す危険を本書は指摘している。
天安門で民主化を叫んだ人々が、民主主義を宣言する08憲法を作った。しかし現在の中国ではこれを支持する層はいないと言う。中国国民は民主化ではなく、昔の毛沢東主義への回帰を望んでいるそうだ。これが大逆流と著者が呼ぶものだ。今の中国の豊かさは、いかに歪で不自然なものか良く判る。
中国は深刻な国内問題を抱え、脆い超大国と言われてきた。本書もその延長にある最新の中国の動向を踏まえた警告の書だ。説得力のある内容であり、中国に興味を持つ者には必読の書だと思う。