著者の興味は当初国内にあった。三島の側近として活動をしていた時期もあった。その後は日本の文化復興運動である浪漫運動の広報担当として、左翼啓蒙化した国内の世論に挑戦した。
それらの運動は自民党青嵐会への支援で絶頂を極めるが、中川一郎代議士の死とともに潰えるのであった。
さて本書であるが、希代の中国ウオッチャーである著者が、その足で歩いた匂いと、政府高官からカラオケボックスの子女までの豊富なインタビューと、英語、広東語、北京語に精通し、その情報網から入手した豊富で正確なデータをもとに、現在の中国を分析し、その近未来を大胆に予想している。まずエピローグでソ連の崩壊を1976年に予測したフランスの人口学者エマニュエル・トッドを引用し、当時トッド博士の説は一笑にふせられたが、13年後予想通りになると説く。
続いてロシアの学者アイゴア・バナーリンのアメリカ6分裂論を提示している。ーちなみにその論とはアトランティックアメリカ、中西部アメリカ共和国、テキサス共和国、カルフォルニア共和国、ハワイ、アラスカの6ヶ国であるー
そして著者の予想は…。
以下はぜひ本書を通読していただきたいが、結論だけ明かせば、著者のメールマガジン読者であれば容易に予想はつくであろうが、まず経済的に北京天津経済圏、上海経済圏、福建経済圏(台湾を含むが後述で台湾の独立にふれている)、広東経済圏、四川経済圏と地域的に東北三省、新疆ウイグル、チベット、モンゴルとなる。
これらの根拠を各章で細かく分析していくが、その慧眼にはうなるばかりである。中国については諸氏が多くの分析をし、書籍を出版しているが、著者と黄文雄氏の論説は第一級であろう。
特に著者の地政学的視点とその足で現地を訪問し、その土地の匂いと空気、そして庶民の動向を永年定点でウオッチしている感覚は、政治経済にしかその視点をおかない他の論説にはない機微がある。
著者は最後にこう語る。
これまでの固定概念的な地方軍閥、地域対立、王朝の腐敗、衰退という文脈からの分裂に至るというシナリオは遠のき、むしろ現代中国に広がった新しい空間、すなわちネットにおける反政府言論というゲリラ戦争、イスラムの思想的連帯という見えない武装戦争、利権争いの集大成としての個別経済ブロック化、地方ではグローバル化の波に乗った資産の海外逃亡などが次の舞台の開幕を継げるであろう。
と筆を擱いている。