中国は崩壊する、と言われ続けて久しい。しかし現実には崩壊どころか今や、世界経済を牽引するとまで言われる勢いだ。一体、何故なのか?そんな疑問から著者は本書を書き始める。
著者の切り口は次の二つだ。
第一は、共産党一党独裁による支配体制。
今や中国は共産主義の国ではない。私有財産の制限も、プロレタリア独裁も、階級闘争も存在しない資本主義社会だ。しかし共産党はこの国を独裁的に統治している。その支配構造そのものが、中国が崩壊しなかった理由だと著者は言う。
共産党の権力構造は独裁体制にもっとも適している。それを最大限利用して中国の支配者は生き延びて来た。その権力支配の核心は、共産党の細胞組織だと言う。あらゆる行政、企業、軍隊、学校と言った組織に党の細胞が存在し、情報収集、指導、監督を行う。
7000万に上る共産党員が隅々まで張り巡らされた細胞によって13億の国民を支配する。その体制は絶対に揺るがないと言う。
第二の切り口は、共産党に対する幻想だ。
まず、神格化された毛沢東への幻想。そして、賢党清官と呼ばれる党に対する幻想。
共産党は、貧しかった中国の民を豊かにし、その上、世界の強国にまで引き上げた。それが中国人の中華思想に基づくプライドを満たし、愛国心を燃え上がらせた。
毛沢東=共産党=救世主=豊かさ=世界の強国と言う図式が中国人の心を捉えている。
それは、格差問題や独裁政治の矛盾を忘れさせる。
著者は中国人は本来、独裁者に支配されることを好むと言い切る。
しかし、豊かで強国になってプライドを満たした中国人に今や、精神の荒廃が襲い掛かっている。この十数年で中国人の道徳的な退廃が顕著になったが、その背後には拝金主義があると言う。あらゆる価値観の基に金銭が存在する。街で転んだ老婆を助けて、逆に損害賠償の訴えを起こされた事件。そして大多数の意見は転んだ老婆を助けることを否定する。共産党独裁を支持し、愛国心を燃やす裏で、人間性を失った中国人の存在。
そんな拝金主義に染まった国民を徹底的に監視、管理してオーエルの描く1984の世界を実現させようとしている中国の将来を予想する。
著者の結論は明快だ。
上記のような中国人の思想、あり方と支配の構造が実にうまく回っている限り、中国は崩壊しないと言う。独裁国家ゆえに世界的な景気後退もうまく切り抜けてますます力を強めている。隣国日本はこの化け物のような国の風下でこれから大きく煽られて暴風に巻き込まれるのだろうか?