21世紀前半において最も危険な国家は、中国である。その理由の一つは、現代中国が主張する「戦略的辺疆」という考え方にある。これは、ナチスドイツのポーランド併合を企図したレーベンスラウム(生存圏)の主張に似ているように見える。しかし、中国の場合、この「辺疆」は、特定された地域・地区ではなく、中国の国力の増減に併せて最大限拡大する領土・領海・領空なのだ。近年では宇宙まで含む概念であり、国力に応じて変更可能な、つまり敵対する国家を排除して拡大できる国境なのだ。そこには、国際ルールを尊重して隣国と協調する考え方は存在しない。
著者は、言う。「古来、中国にいわゆる『国境』という概念はない」と。歴史的に見て、「満州」「蒙古」「新疆」「チベット」といった「辺疆」は、「緩衝地帯」であると同時に絶えず朝貢下に置かなければならないところであった。しかしそれは、19世紀の欧米列強の進出と各地で起きた独立運動、世界大戦後の勢力地図の書き換えによって変化した。毛沢東の中国は、戦後、これらの地域に恫喝と工作、そして凄惨な軍事攻撃をしかけて勢力下に治めたものである。
著者は、近年の中国が、「現代版中華帝国」の再興に狂奔していることを危惧する。清朝最盛期の版図を超え、宇宙と海洋を目指す中国の野望は、根底に屈折したルサンチマンを持つだけにやっかいなものだ。また、「南シナ海」を核心的戦略区とし、「西アジア」「インド洋」「中東」「アフリカ」そして「東シナ海」「西太平洋」まで触手を伸ばす。「尖閣」「台湾」に攻め込む機会を伺っていることは明らかだ。
先日、逝去された外交官、村田良平氏は、「初手に、万事穏便に」という現代日本の外交は著しく国益を傷つけるものである、と厳しく批判している。著者は言う。「中国に日本の常識は通用しない。中国は、共産党の一党独裁、核を主力とする軍事国家であり続けるだろう。その軍事行動と恫喝は下手に出るほどエスカレートするだろう」。今こそ、日本人の覚悟が期待されているのだと、著者は訴えている。