この本に書いてあるような侵略の歴史を経て中国は現在チベットを実効支配している。今後チベットが独立を取戻すとすれば、ソ連と同様に中国が解体した時だけだろうと思われる。他国に侵略し、文化もろとも破壊し、併合する、という拡張主義は、康熙帝・乾隆帝のころであればそれ自体目的として成立していたのだろうが、20世紀という時代にあっても成功してしまったのはやはり第二次大戦後のドサクサまぎれという国際情勢があったためで、今日のようにメディアにより劇場化された世界では殆ど成立しえない行為であった。
著者は疑問の点として、国際的バッシングという危険を冒してまでなぜ資源も無く治め難い国を侵略・併呑したかについて、潜在的な中華思想からくる拡張主義だろうと推察しているが、それに加えて私はやはりインドとの防衛ラインを確保しておく、という戦略的意図が毛沢東にはあったのだろうと思う。
この本を読んだ後で「セブン・イヤーズ・イン・チベット」のDVDを見たのだが、どんな戦略的意図があるにせよこういう侵略行為による悲劇を今後許してはならないし、チベット侵略に対する反省をいまだに表明していない中国は現在でもそれを平気で行える国であることを知っておく必要がある。
この本に対する注文を一つ・・。タイトルからすると中国によるチベット侵略史をカバーしているように受取れるが、内容的には1959年のダライラマ亡命までで終わっており、1970年代の文革時代の第二次弾圧までは記述されていない点が残念である。