本書は、中華民国史を専門とし
現在は北九州市立大学教授である著者が
中国の異民族政策に関する言説が、
どのように変化してきたのかを概観する著作です。
漢民族と異民族の区別を重視する「華夷之辮」と
両者の融和を重視する「大一統」、「大同」
一見矛盾しそうな、異民族政策の二つの潮流が
西洋列強の進出、外モンゴルの独立、共産党による革命
―といった国内外の情勢の変化を受けどう変化したのかを、
簡潔ながらも躍動感に溢れる文体で描きます。
記述の中心は政治家や学者の発言に置かれますが、
チベット、新疆ウイグルのように
近年も国際的な関心を浴びる地域については
シャカッパや王柯さんらの先行研究を参照しつつ
20世紀初頭から今日に至るまでの政治情勢が紹介されます。
個人的には
しぶしぶ「五族共和」を認めていた孫文が
日本に亡命後に「同化」を主張し始めたという記述が興味深く
当時の日本の「同化」政策と思想的なつながりがあるのか?
などいろいろ調べてみたいと思いました。
批判することを目的としていないので
余分な感情は差し挟まれませんが
蔑視の対象となり、いまだに自治権すら認められない人々への
義憤を端々から感じ取ることができます。
近代国家が誕生する中で
異民族がどのように扱われたのかを
政治思想史的な観点から、具体例に即し論じた本書。
中国近代史に関心のある方はもちろん
ナショナリズムや民族紛争に関心のある方など
幅広い方に読んでいただきたい著作です。