「水滸伝」「金瓶梅」「紅楼夢」のうち、水滸伝を除く2作は、三国志、西遊記と比べると日本における知名度は低いが、完成度、とりわけ紅楼夢はとても高い。大家族をひたすら書いているだけなのに、人物設定、微細な事物や行事の表現を凝りに凝り、読み出したら止まらないという。これだけ考え抜かれたのかと感嘆する。中盤で大きく盛り上がり、クライマックスを迎えた後、終盤にかけて登場人物が次々と去り、バイプレーヤーがさみしく幕引きする。「源氏物語」や「平家物語」と相通じるものを感じた。
上下巻合わせて700ページという異例の大著。上巻発売後、下巻発売まで1年を要したが、上巻に全く劣らず、物語としての醍醐味を見事に書ききった。物語自体のツボはもちろん、「なぜ物語は楽しめるのか」を考える物語論としても、合理的な説明を与えてくれ、非常に読み込める。