日本の中国学は、内藤湖南と共に宮崎市定を抜きにしては語れない。宮崎博士の業績は全集になっているが、中公文庫でも「雍正帝」「大唐帝国」「アジア史概論」、岩波文庫でも「史記を語る」等の名著が手軽に入手できる。「アジア史概論」にみられるように宮崎博士は研究を中国だけの閉じた世界と捉えず、日本、朝鮮、東南アジア、インド、イスラームそしてヨーロッパ文化との比較を常に意識しながら、この中国文明の本質を探るという態度が一貫している。もうひとつの特徴として宮崎博士の著作は、学術論文という枠を超えて、読み物として味わう独特の、文体を持っていることである。読みやすいことは言うまでもない。この中国古代から文化大革命まで色々な話題を扱ったエッセイを集めた本書「中国に学ぶ」でも、博士の闊達な語り口に引き込まれる。エッセイ集で、一貫した編纂方針のある本ではないので、自分の興味のある文章だけ拾い読みするだけ得るものは大きいだろう。