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さて、中也の解説は私ごときがやることではないのでこれくらいにしておき、ここでは岩波文庫版の特色を挙げておこうと思う。集英社文庫版に比べ、岩波版はとにかく収録している量が多い。ページ数も約二倍で文字も小さく、「山羊の歌」と「在りし日の歌」は全篇、後書きまで載っている。しかし、未刊詩篇は当然編者である大岡昇平により選ばれているので、集英社版に収録されているもののうちほんのいくつかがない。私の好きな「酒場にて」が未収録なのは個人的に残念である。それでもその圧倒的な量は集英社版とは比較にならない上に、短歌も初期時代のものと「温泉集」が収録されている。とりあえず作品をたくさん鑑賞したい方にはおすすめである。
解説は、中也のバイオグラフィーを追いながら書かれており、大岡昇平の「中原中也」を読んだことのある人には目新しくない。個人的には集英社版の新保祐司の方が興味深い解説だった。新潮文庫版もそのうち読んでみたい。
最近の国語の教科書から遂に鴎外が消え、俵まちが掲載されているというような話を聞いたことがある。さて、中也はどうなのか?
確かに鴎外は比較的難解であるため、文学アレルギーを起こさせるという懸念は分からぬでもない。だからといって「サラダ記念日」ではないであろう。
中也の詩は現在の少年少女達の心と比較的容易にシンパシーを生じるのではないか。中也の詩は文学の深淵なる世界への扉になってくれるのではないかと思う。
比較的平易な言葉で耽美で切ない世界をえがく中也の詩こそむしろ文学の入門書として恰好なのではないか。
多くのファンを持つ中也だが、代表的人物として、元YMOの高橋幸宏さんがいる。(幸宏さんの世界もまた耽美で切ない)
本書は中也の世界が網羅された必携の一冊であると考える。
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