ヨーロッパ中世社会にキリスト教が浸透していく中で、人々の関係はどのように変化したのか、というテーマの6論文を収録。挿絵も多少ありますが、基本はがっつりしたヨーロッパ中世社会史の論文集という印象です。著者の解説が行き届いているので、事前知識がなくても興味があれば楽しめる内容ですが、阿部氏の他の著作(中世を旅する人びと、ハーメルンの笛吹きetc.)を知っていると、より入りやすいと思います。
本書の内容は「日本の慣習と似たものを持っていた中世ゲルマン社会が、なぜ今のように異質の世界に変化したのか」という問いに集約されています。著者はその答えとしてゲルマン社会へのキリスト教の浸透を挙げ、具体的な社会の変化として死生観、自然への畏怖の変質、それに伴う賤視された人々の出現を解説していきます。
阿部氏の議論は論理的で、とくに賤民論は独特で面白く感じました。一方物足りなかったのは、ヨーロッパでだけ現代に通じる世界観が誕生したことの理由。話題がゲルマン民族エリアでほぼ完結しているので、地中海世界ではどうだったのか?など補完情報が欲しいところです。