本書一読、余りの固有名詞の多さに、当方の情報処理が間に合わず、何ともよく分かりませんでした。概説としての哲学史通史しかやったことなかった身には、本書に登場するキリスト教思想家を中心とした中世の哲学者に、初見の名前が数多かったからです。
しかし。
最初に触れた時には殆ど知識の定着を見なかったのですが、中世絡みの本(例えばエミール・マール『ヨーロッパのキリスト教美術』とか)を読んでいてより深く知りたい人・物が出て来た際、本書に当該記述があったようならば、参照するようにしてみました。そうすることによって、少しづつ馴染んでくるようになりました。更に参照する際、本書は基本的に通史である為、参照語句のみを知るのではなくして、語句の周辺を読むことによってそれを体系的(或いは「関係的」)な知識とすることができます。
本書を「通読できる辞書」的に使っていくほどに、これはこういう風に使う本だなあと勝手に合点するようになりました。
かのルネサンス研究家にして真物の知識人・林達夫がブルクハルト『イタリア・ルネサンスの文化』について「ヨーロッパを俯瞰する為の格好の物見櫓」と述べたのは有名ですが、本書も今述べたように、中世思想の「見晴台」あるいは思想史のコンパクトな「地図」として活用されるのが有用な遣り方かと考えます。
つまり、とりあえずざっと読んでおいて、あとはしかるべき時に引き戻って確認する。
深く知りたければ、どの年代か当たりをつけて参考文献表から他の文献にあたる。
そういった使い方が出来るように、本書の索引および参考文献表は他の新書判に例を見ないほど充実しております。
一度通読して分からなかった人も、時間と根気が許すならば、もう一度読むか、類書を読む際に時々帰ってきてみることをお勧めします。本書が、中世という混沌たる時代を読む為の、格好の見晴台の一つになってくれるかもしれませんよ。