このシリーズは、なかなか和訳されないような、文献がたくさん訳されており、その全20冊すべてが魅力的である。
この第3巻で私が興味を引かれたのは、偽ディオニュシオスらの著作である。本書ではその内「天上位階論」「神秘神学」「書簡集」が訳されている。他の偽ディオニュシオスの訳と言えば、教文館の『キリスト教神秘主義著作集』の「ギリシア教父の神秘思想」に熊田陽一郎氏訳の「神秘神学」と「神名論」があるが、これらをあわせれば、あと「教会位階論」が訳されれば、偽ディオニュシオス文書に日本語訳は一応、揃うことになる。
偽ディオニュシオスの思想は否定神学として有名だが、「神秘神学」を読んでみるとそれが単純な否定だけの思想でないことが分かる。それらの否定の中には!、新しい世界を思わせる力があり、人々を強く揺り動かすような深い洞察がある。「天上位階論」も下手な天使学の本を読むよりずっと面白い。
これらの偽ディオニュシオス関係の訳だけでも面白いのに本書には他にエウアグリオス・ポンティコス、ネストリオス、アレクサンドレイアのキュリロス、偽マカリオス、ヨアンネス・クリマクス、証聖者マクシモス、ダマスコスのヨアンネス、ストゥディオスのテオドロス、新神学者シメオン、ミカエル・プロセス、グレゴリオス・パラマス、ニコラオス・カバシラスの著作の訳が収められている。
この値段は高価に見えるが、存分に楽しめる分、絶対に損はしない。なくならない内に絶対に手に入れるべき本である。