岩波書店から刊行されているシリーズ「ヨーロッパの中世」第1巻(第1回配本)です。
本書は、主に政治史・法制史の領域を中心に扱い、最新の研究も紹介しながら、ヨーロッパ中世の世界を描いています。
特に、序章でのヨーロッパ中世の位置づけが興味深いです。ギリシャ・ローマの時代は、ヨーロッパは世界システムの考え方(世界を中心―半周縁―周縁に分類し、それぞれの関係を分析)でいえば「中心」の位置にありました。それが、ゲルマン民族の侵入により、ヨーロッパは半周縁に置かれる。本書では、これが、中世の始まりとされます。そして中世の終わりは、オスマン・トルコによるビザンツ帝国(東ローマ帝国)の滅亡が置かれます。というのも、この事件まで、ヨーロッパには周辺(東方)の地域からの侵入が相次いでいました(マジャール人、モンゴル人などなど…)。それが、ビザンツの滅亡以降(というのは、オスマン帝国の強大化以降)、大がかりな東方民族の侵入は止むというのです。そして、ヨーロッパの空間は輪郭が明確になり、新しい時代につながっていく、というのですね(なお本書では、ヨーロッパ=半島という視点が強調されています)。
その他、興味深かったのは、あえて中世の国を「国家」ととらえ、近代的な国家観を適用するのではなく、中世国家の独自性を明らかにしようとする第一章。ここでは、メロヴィング朝とカロリング朝の地方統治の在り方の対照性について、特に興味深く読みました。
また、修道院長の性格と修道院内の支配について論じた第五章第2節は私には目新しく、難しいながらも興味深く読みました。
このシリーズは(2009/02/12時点で)既に三冊刊行されていますが、どれも新しい論点を提示しており、また末尾には主要参考文献目録も掲げていて、今後の研究をさらに深める手掛かりとなるでしょう。