本書は1957年に生まれ、ヘント大学に留学した中世ネーデルラント史研究者が、1996年に刊行した小著であり、その内容は以下の通りである。第一に、西ローマ帝国崩壊後もヨーロッパは商業無き社会ではなかったが、11世紀以降の地域経済の発展が都市的定住地の発展を後押しし、ヨーロッパの南北商業を活性化させた。第二に、こうした都市的定住地は、特に北部では領域的平和を目指してしばしばコミューンを形成したが、必ずしも農村以上の自治権をもっていたわけではなく、南北を問わず寡頭政的傾向が強かった。一般に現在では中世都市の自治の過大評価や、農村との差異の強調には警鐘が鳴らされている。第三に、都市は教会人のイメージの上で、聖なる場であるとともに悪徳の場であるという二重性を帯びていた。第四に、都市領域は一般に狭小で人口過密状態であり、家畜や汚物のために不潔で、飲酒による暴力が絶えなかったが、人間関係はその分緊密であった。第五に、都市は小教区や街区に分割されており、それらが都市民にとって身近な生活単位であった。第六に、都市は多くの祝祭や、大学、施療院、托鉢修道会の発展の舞台になった。第七に、市民は貧富の差はあれ、一般に同業組合や兄弟団に所属していた。第八に、市内に住む聖職者やさまざまな周縁民は、市民と異なる形で法的に位置付けられていた。第九に、中世後期の危機の時代には、多くの都市で騒乱が生じたが、それをツンフト革命と見る見方は修正されている。第十に、中世都市の「自由と自治」の強弱にいわば反比例して、その後の「国家」統一過程は進行した。以上のように、本書は西欧を中心に、中世(400〜1500年頃)都市社会の諸側面を具体的かつ簡潔に描き出している。