フランス、アナール派の中世史家ル=ゴフによる中世の身体史概観。全体的にフランス風の軽妙な語り口によって語られ、興味をそそる逸話もふんだんに取り入れられ、更に日本語版には原書にはなかった図版も収められていて、初心者にも楽しめる作りとなっている。忘却されてきた身体を歴史の舞台へとあげるという企ては成功しているが、西洋人の身体観の原型が他の時代よりもこの中世にあるとする著者の主張は、自分の専門分野である時代を過大に現在の原型と見なすという歴史家にありがちな陥穽にはまっていなくもない。扱いが一番小さかった最後の4章「メタファーとしての身体」をもう少し膨らませて欲しかった。
同じ分野における英語圏での研究もかなり進んでいる。英語圏の研究成果も反映させていたら、もっとよいものとなったであろう。
コルバン他編による「身体の歴史」も同じ藤原書店から翻訳出版の予定のこと。英訳よりも先にでることを期待する。