現在の様式の科学がなぜ西欧で発展したのかを追求して行くとルネサンスに行き着く。では、ルネサンスがなぜ起こったのかを見ようと思えば、中世の文化に足を踏み入れることになる。科学研究を生業にしているのだから、そのルーツを理解しようとするのだが、根が深い。
本書では、中世中期のギリシャ哲学特にアリストテレスの再発見から説き起こして、大学(主としてパリ大学)での教養学と神学との闘争をルネサンス直前まで追っている。かなりの大部で記載的なのだが、興味を持って読み続けることが出来たのは、「科学の萌芽」が少しずつ育つのを見ることが出来たからなのだろう。
特に、ルネサンス直前のウィリアム・オッカム(オッカムの剃刀のオッカム)の論理と、ジャン・ビュリダンのインペトゥス(ニュートン力学の質量そのもの)には驚いた。ガリレオの力学は虚空から突然生まれた訳ではなかったのだ。
その論理なり科学なりが、基本的にはキリスト教神学の強化、ないしは経験と神学の調和を目指す神学の一部として、修道士によってなされたと言うのが、きわめて興味深いところである。西欧以外、宗教的にはカトリック圏以外では、このような発展はなかった。では、カトリック圏と、正教圏、イスラム圏、中国、日本などと、何が違ったのであろうか。
その答えは本書にはない。しかし、この歴史を見て、宗教権力と世俗権力の並立が大学の権力からの独立を用意したからではないかと思うようになった。もちろん、それだけですべてが説明できる訳ではないし、私にとっても腑に落ちた気分からはほど遠い。まあ、世紀の大問題を考えているのだから、そう簡単に答えが出るはずはないよなあ。