阿部謹也が亡くなった。70歳余である。まだ若いのに。
「欧州の中世を日本に紹介した人」というと まずは阿部謹也だと思う。エッセイ風で万人が読みやすい。しかも 各エッセイの表題が常に詩情を湛えている点で 引き込まれる。
本書においても表題の「中世の星の下で」のみならず 「中世びとの涙」「中世ヨーロッパのビールづくり」「鐘の音に結ばれた世界」等の題がある。見ているだけで 色彩豊かな情景が浮かぶではないか。
阿部謹也の諸作を読んでいると 中世ヨーロッパと現代日本の恐ろしいほどの違いを感じる。彼は その違いを 極めて分かり易く「翻訳」しているのだと思う。言うまでも無く 「翻訳」はとてもクリエイティブな作業だ。その華麗な訳しぶりが 彼の著書の魅力である。
小生自身は 彼にとっては そんなに熱心な読者ではないのかもしれない。そんな小生にしても ゆっくり読んでいると 楽しい。
しかし惜しい方が幽明を境にされたかと思う。