本書は歴史学的見地から、中世(フランス)のパンについて様々な側面から追った本であり、研究書に近い書籍である。
中世ではパン屋はもちろんのこと、個人の家庭、有力者の屋敷、修道院などでもパンが焼かれていたという。
この本ではまず粉を挽くところから詳説する。当時、水車を利用した粉挽き場が各地にあり、いろいろな粉を作っていたこと、
また、料金や挽き方に関わる諸問題を紹介。中世当時の絵も掲載されている。
当時のパン屋のパンづくりについても述べられ、火力は薪で焼き上がりのタイミングは長年の勘、そして重量などの規定が多いことから、
パンづくりの作業が実は相当手間のかかる、大変な作業であったことがよくわかる。
また、パンの種類やパン職人のギルドなどいろいろな点が書かれているが、興味深いのは郊外から市街へのパンの移入である。
もちろん、街中でもパン製造・販売は行われているが、それに加えて数キロ〜数十キロ程度離れた所からもパンは持ち込まれ、売られていた。
また、不作・豊作で麦の価格が上下したときには、価格を据え置いてパンの重量を変化させる手段がよくとられたらしい。
小麦価格と粉の使用量、できあがりパンの重量までもが、どこまで守られたかは別としても、当局によって詳細に定められている。
こうしたことを決めるために、役所側がパンの製造実験も繰り返したらしい。当時いかにパンの供給が重要であったかがよく伝わってくる。
そのこだわりようは、他に食料がないのかと思ってしまうほどのものであり、パンの生活の糧としての重要性が印象深い。
貨幣と重量の単位がややこしいものの、図版も収録され興味深く読める一冊。