わが国では『木を植えた男』でしか知られていないジャン・ジオノ(1895〜1970)の処女作。高地プロヴァンスの小さな村を舞台に、自然と人間との相克を詩的に描いた寓話風な作品です。
あくまでも私見ですが、一読して、昨年起きた東日本大震災と福島原発メルトダウンの惨状と、今年になって激化しつつある原発再稼働をもとめる行政の動きについて、どうしても思いをめぐらさずにはいられなかった。私たちひとりひとりが熟慮したうえで、後世に禍根をのこすような選択だけは、絶対に避けなければなりませんね。
《「今回は俺たちが何とか勝ったが、明日は、丘の方が勝つだろう。
時間の問題だ。つまり、俺たちはどんなことを用意できるだろうか? 少しくらいは長く持ちこたえられるかもしれない。ただそれだけのことだ。
このたびは丘は俺たちをやっつけ損なった。もう少しだったのに。だけど失敗したのだ。明日になれば、丘は俺たちを徹底的に叩きのめすだろう。
それに丘が明日まで待つかどうかだって、誰にも分らないことだ。」》
フランス近代の心理小説の伝統と異質であること、一種のアニミズムのような世界観を拠りどころとしていることに、私は興味をおぼえました。1929年に発表されると、アンドレ・ジッドが激賞したそうです。
訳文は残念ながら、かならずしも詩的な文体の素朴な躍動感を伝えきれていないという気がしました。しかし、ていねいな解説は参考になります。