崩れかけた壁、廃屋、煤けた装飾、人造物なのかも怪しいような地面の盛り上がり。
古くからの「手仕事」によって作られ、そして今消滅しようとしているモノたちを、写真で切り取った。
これはカタログではない。物件の詳しいデータはついていないし、著者の解説文も散文的で専門用語が多く、詳細不明瞭である。
そして、著者は、こうしたモノを保護しよう、保存しようと強く主張しているわけでもない。
ただ、こういうものがある(あった)、ということを淡々と示している。
そしてそれは結構なボリュームである。本書は続編であるが、本書だけでも300件以上が収録されている。
これらの「手仕事」は、恐らくそう遠くない将来に、静かに消え去ってしまうだろう。
そう考えるとこの写真集は「遺影集」であることになるが、そうした悲愴さも感じられない。
そのモノと同時代に生きた著者の、潔い「目の記録」である。