郵政選挙から、2009年の総選挙までの選挙や世論調査の分析を行い、メディアにまかり通る、正しい根拠に基づかない政治分析をまさになで斬りにした感じの本。社会評論やネット世論に非常に厳しい言葉が続くが、膨大な数字資料をデータ化し、緻密な意識調査を自身も行い、慎重に読み取るという手間をかけて現代政治を読み解こうとしている著者からすれば、丹念にデータを整理すれば、答えは自ずから出るのに、思いつきで間違ったことをぽんぽん喋りやがって…という気持ちは分かる。投票結果という加工しようがない数字からまとめたデータから引き出す、さまざまな著者の分析にはまさに有無を言わさない。
郵政選挙で都市部の凄まじい熱気を、報道する立場で見た私はこの熱気を何だったんだろうという思いをずっと抱いてきたし、安倍政権になってから潮が引くようにその熱気が引き、小泉氏が地方疲弊の元凶と叩かれる、でも氏への待望論は根強い、という状況も不思議に思っていた。そんなもやもやした思いについて、郵政から昨年にいたる自民党の凋落は「農村での失点ではなく、改革路線を交代させた自民から都市部住民が離反した」からという分析は、求めていた回答を得たように感じる。ほかにもいわゆる「麻垣康三」が次々と脱落した後、消極的選択にもかかわらず麻生氏への実体のない首相待望論が登場した経緯、安倍氏の人気急落の背景なども数字を駆使して行われ、非常に読ませる。巻末で著者自身も述べるが、与党が勝っても野党が勝っても理由に都合良く使われる「無党派層」なる妖怪を一切使わず、主張の骨は自身が明らかにしたことだけで書ききっている。本書は今の政治動向のぼんやりした「なぜ?」の多くにしっかりした説得力で応えてくれる本だと思う。