世親といわれるヴァスバンドウ、興福寺の深い思索的な彫刻に接して以来興味があった。仏教書としては現代の言葉で解説されている。前半は伝記で比較的に読みやすい。興福寺で対峙する無著との関係は? 後半は世親の著書の解説である。2,3度読み返してみて、これらの章を書かれた著者の畏友の横山氏に感服する。自然科学と資本主義現代に生きる者に、唯識について、仏教用語を判りやすく解説され、理路整然としている。当初同じようなことを書いてあり素人には区別がむずかしいと感じたが、読むほどに仏教、世親の説いた無我や唯識の意味が判りそうな気がする。自己存在の構成要素の五蘊、それらの作用の蓄積変転する深層心理世界のアーラヤ識、憶念・三昧・智慧へと発展しうる人間の心。4ー5世紀ごろに生きた人々の考えの偉大さ、本書はそれを現代的に生かそうとしている。星5つにすべきであった。