一読して唖然。本当に小説より奇なりで、もし小説家が、投資銀行も格付け機関も保険会社も銀行も、自分の扱っている商品について何一つ知らないでそのまま世界経済が崩壊する、なんて小説を書いたら、そんなバカな設定があるか、とせせら笑われたはず。それが実際に起きてしまったという驚愕の事態を実にうまく書き上げている。
また、勉強にもなる。実は本書を読むまで、クレジット・デフォルト・スワップの仕組みって知らなかったんだよね。本書はそれをいとも簡単に説明。正直いって、これまで読んだ新聞雑誌等でのCDSの説明も、たぶん実はよくわかってないやつが書いていたことが本書を読むとよくわかる。
でもリーマンショックやサブプライム関連の関係者のひどさを書いた本は多いけれど、本書が他の上から目線の「貪欲な投資銀行が悪い」「拝金主義の経済が」といった知ったかぶりの後付批判本とちがうのは、そこに皮肉な人間ドラマがあること。本書のヒーローたちはみんな、当時のサブプライム融資やそれを使った金融商品のひどさを知り、世間の流れに公然と反旗を翻し、白い目で見られる。でもかれらの正しさが証明された後でも、やっぱりかれらは孤独なままで、賞賛されることもないし、儲けさせてあげた人々からも感謝もされない。単純な「正義は勝つ」ではすませていないところが、本書の奥深さ。よい本です。
なお、カバー見返しの訳者の略歴は笑えるのでご一読を。東江一紀は優れた翻訳者で本書も実にうまいが、これはさすがに……