賛否が大きく分かれる本だと思いますが,一読の価値は十分にあります。
著者は,ブラジル在住のフランス人経済学者で,農産物市場のコンサルタント。農業保護
貿易主義者やアメリカの農業政策に批判的。ちなみに,本書ではブラジルはウクライナ等と
ならんで,食糧危機を回避する救世主と位置づけられています。
260ページが3部に分かれており,第一部で食糧危機の現状,第二部で対策を講じなかった場合の
将来像,第三部では,主にEUやアフリカ諸国を例に,著者の農業政策や貿易に関する提言が
論じられています。提言の部分には,遺伝子組み換え作物支持など,我が国では一般に受け入れ
られない意見も相当あると思います。しかし,それでも,この本に一読の価値があると言えるのは
圧倒的な数字やデータを用いて食糧危機の現状を淡々と説明しているその説得力にあります。
過去50年間,安価な化石燃料を駆使し生産性を向上させることで,需給を均衡させてきた
世界の農産物市場が,化石燃料の高騰,人々の食の嗜好の変化,都市化などの影響で,今後は
完全に供給不足になり,その結果,農産物輸出国の影響力が急拡大していくというシナリオは,
先進国の中でも特に食糧自給率の低い我が国にとって怖いものがあります。
巻末に追加されている日本向けの著者のメッセージが意外と楽観的なのには,少々驚きました。