ミッションスクールで18歳までの時をすごした私は、夢見がちで、
いつも心はさまざまな空想や小説の世界を旅している少女だった。
愛も恋もまだ知らず、たゆまぬ努力は必ず報われるものだと信じていた。
あの頃の私にとって、ヨーロッパは遠い地の果てであった。
そんな日々から、はや四半世紀がすぎようとしている。
生活の知恵などは一向に身につかないままであるが、
物思いにふけることも忘れ、卑近な出来事に喜怒哀楽を費やす毎日である。
あこがれていた国々を訪れる事もないまま、夢はいつしか思い出になっていた。
ところが、この本を開いた瞬間、私の中を風が駆けぬけるのを感じた。
結局空想の中でしか旅していない私にも、美しい車窓からの景色がなぜかなつかしかった。
それはもう何年も味わったことのない甘酸っぱい感傷だったろうか。
空間を超え、時間を超え、そして文字通り国境を越える旅。
いながらにしてそんな旅を与えてくれるこの本は、極上のタイムマシンでもある。