本書を読んで、特に有益だったのは以下の点です
1.アメリカの住宅ローンがノンリコースと言われるが、ファニーメイ・フレディマックの標準契約書にはノンリコース条項は入っておらず、制度的ではなく運用上ノンリコースであるにすぎない。
2.よくS&Pケース・シラー住宅価格指数が引用されるが、同指数に含まれるのは20大都市のみであり、カバーしている範囲に偏りがあるので他の指数と併用すべきである。
3.投資銀行の中でゴールドマンサックスのリスク管理が群を抜いており、例えば、BISのワーキングペーパーの担保借入と資産規模変動率の相関が少ないことがに現われている。
いずれも深い専門知識があればこその分析で、本書を読んでよかったと思いました。
但し、「「神よ、何故あなたは私を見捨てたのですか」とリーマンブラザーズの関係者はポールソン財務長官に向かってそう言いたかったに違いない。」という冒頭のくだりはジャーナリスティックで余計な表現と思いました。
また第5章の問題の検証で、リチャードクーを引用していますが、彼に対する評価は経済学界では定まっていないので、むしろ著者自身の言葉で分析したほうが良いと思いました。
余談ですが本書の中で、ファニーメイ・フレディマックの株価が7月に急落した原因はリーマン・ブラザーズ証券のレポートだったとありましたが、リーマン・ブラザーズがつぶされた一因は、この準公的金融機関の虎の尾を踏んだことにあるのではと憶測しました。