市場は自由であるべきであり、保護貿易や産業保護は悪い結果しか生まない。金融市場の効率化こそが金融資本の最適配分延いては実物経済の発展に資し、経営者は株主利益を第一に経営すべきである。産業発展と共に世界は脱工業化に時代に突入し、また経済のグローバリゼーションと共に資本活動や企業活動の前に国境は消滅した・・・等々。
私達が日々よく見聞きするこれらの論は正しいのか? 本書では、反自由市場主義の立場を取る著者が23のトピックについて反論を展開する。ひとつのトピックごとに15ページ程度の分量だが、具体的な例を用いながら簡潔に分かり易く説明している。
印象的だったメッセージのいくつかは下記の通り。
・規制は市場の自由を制限するので導入すべきでないという意見は、その規制によって守られる権利を認めないという政治的意見を表明しているに過ぎない。
・あまりにも自由すぎる金融市場は、超過流動性によって金融危機の種を撒くのみならず、「辛抱強い資本」の確保を難しくし、実物部門の長期成長力を削いでしまう。
・脱工業化は、サービス産業よりも製造業における生産性が速く伸びた結果、そのように見えるだけであり、製造業をないがしろにすると国際収支の赤字を招き、長期的には経済力を削いでしまう。
・個人がもらう賃金は必ずしも当人の能力を反映したものではなく、大部分が社会・経済システムの賜物であり、また移民規制によって支えられたものである。
官僚主導の下幾多の保護・規制を用いながら経済発展を遂げた私達の国はいま、失われた15年を経て、規制緩和、金融市場改革、株主至上主義、実力主義等々、様々な概念の導入下である英米型自由主義経済システムに舵を切ってきた。そしていまも自由貿易協定や移民政策について議論がかわされている。いまいちど立ち止まって、本書をゆっくり読んでみる、そしてわが国が取るべき方向性について議論してみることに大きな意義があると思う。